地球の潜り方
その13 =沈めない!耳が=
皆さんは、ダイビングでいつも不安になる事項は何であろうか。筆者の場合は下記の4つである。
1.耳が抜けにくい。
2.比較的沈みにくい。
3.船に強い方ではない。(但し、いつも酔いがちになる訳ではない)
4.空気消費は多めである。
このうち、3と4は除き、ここでは耳が抜けにくいことと沈みにくいことを取り上げてみよう。
耳抜きはダイビング雑誌でも時々取り上げられているくらい重要であり、各人の体質によるところもあるため、ある種「永遠の課題」である。かつては(ダイビングを始めて3年くらいは)、潜るたびにサイナスを起こし、いつもエキジットするとマスクの内側に血がうっすらと付いていた。このような状態では、耳抜きにじたばたしてしまい、潜降を始めても直ぐ浮上してしまうことが多かった。よって、どうしてもオーバーウェイトになってしまっていた。その後、唾を飲み込むことを併用することにより、かなり楽にはなったが、それでもヘッドファースト潜降は出来ないことが結構あり、普通の人よりは潜降に時間がかかるのが実情である。
さて、上記で「潜降を始めても直ぐ浮上してしまうことが多かった。」と書いたが、これはじたばたすることにより呼吸が整わないことにも原因の一つであるが、他にBCの空気の排気が充分でないこと、及び、息を吐いて止めることを充分に行っていなかったことも原因であった。
BCの空気の排気を始めて直ぐに体が沈むようであれば、これは結構なオーバーウェイトである。それこそ適切な姿勢をとる間もなく潜降していくのは危険この上ない。各種教本にも書いてあるが、ウェイトは深度数メートルまで沈めるだけの最低限の量でよい。しかし、耳が抜けにくく沈みにくい状態で、どうやったらウェイト量を減らすことが出来るだろうか。以下は筆者が行っている潜降法である。殆どは教本等に記載されている内容である。参考になれば幸いである。
1.水面にいる状態で、まずBCの空気を抜く。
2.息を完全に吐いて数秒止める。ゆっくり沈み始めたら、もう数秒待ってから少し空気を吸って耳抜きを始める。(沈み方が遅いからといって慌ててはいけない。ここで沈めないならウェイト不足、沈み方が早ければウェイト過剰である。)耳抜きは鼻をつまむ方法と唾を飲み込む方法を併用する。
3.「息を少し吸っては耳抜き」を継続しつつ潜降する。水深10メートルにならないうちに一度停止し、耳の調子を確認する。(集合地点が水深10メートルに満たないのであれば、集合地点まで行く。)
4.もし水深10メートルを超えても耳の抜け具合が悪い場合、ガイドに申告して浮上する。場合によってはダイビングを中止する。
上記の方法を行っても、最初に書いたとおり普通の人よりは潜降に時間がかかるのが実情であり、非常に流れが強い所で潜るときは緊張する。もし耳の調子が良くなく潜降に手間取ってしまった場合にガイドとはぐれてしまう可能性が高くなるからである。(安全を考えると、流れが強いところではダイビングをしないことが本来良いのであろう。場所は明かさないが、以前に耳抜きに手間取っているうちにガイドから相当離れてしまい、あわや漂流かという事態になったことがある。)
よって、筆者は現在まで与那国には行っていない。流れが強いところで30メートル近くまでフリー潜降するのは非常に困難と思われるからである。
上記で「息を完全に吐いて数秒止める」と書いたが、レギュレータをくわえているとはいえ、息を吐いて止めるというのは何となく嫌だと言う人もおられるかもしれない。筆者の場合、息を吐いて沈む感覚を掴むためにプールを利用した。但しプールと言っても普通のプールであり、ダイビング練習用ではない。勿論ウェットスーツを着ての入場は出来ないので、ダイビングと同じ感覚での練習はできない。あくまでも「擬似的感覚」を掴むためのものである。以下が「擬似的感覚」を掴むために筆者が行った方法である。(やり方によっては変質者に間違われてしまう可能性もあるので注意しましょう。)
1.遠泳をしている人の邪魔にならないところを陣取る。(どこかプールの隅か壁際がよい。)
2.立った状態で息を吐く。(ウェットスーツを着ていないので直ぐ体は沈み始める。)
3.プールの底で座れる状態になるまで息を吐く。
4.プールの底で座れるまで体が沈んだら、息が少し苦しくなるまでそのままの姿勢でいるか、あたりを見回してみる。息を吐いた状態であたりを見渡せるだけの余裕を持てるようになろう。
=注記=
以前に日本国内のあるガイド氏から伺ったことであるが、ほぼ同一の背格好、ほぼ同一の装備(ウェットスーツの厚さは勿論同じ)、ほぼ同等のダイビングスキルの人でも、ウェイト量が1kg以上違うことはあるのだそうである。もちろんどちらか一方がオーバーウェイトなのではなく、本当の意味での「浮きやすい体」なのだそうである。
なお、最近Y.N.医師(雑誌に良く出ている先生)から伺ったのであるが、「肺活量の多い人はどうしてもウェイトが多めになるので、ウェイト量を気にしすぎるのも場合によっては考えもの。」とのことである。
以上
文責:折原 俊哉(会員)