地球の潜り方
その28 =危険行為(2)-パニック寸前?=
以前のコラム「危険行為」では、ダイビング直後の飲酒とヨーヨーダイビングを取り上げた。でも、これらは危険行為の一部分に過ぎない。
今回は筆者がヒヤリとしたことを紹介しよう。
1.残圧ゼロ(慶良間)
・状況
これは、以前のコラム「鬼門」でも紹介したが、1992年11月のことである。強い流れにつかまり、筆者は水中で息が上がり、他の人たちについていけなくなってしまった。1人流されたらどうしようかと心配になったところでガイドが気づいてくれたのであった。
残圧ゼロになったのは筆者だけで、他の人はだれも残圧ゼロにはならなかった。筆者と経験本数が同程度の人もいたが、残圧を気にするような状態にはならなかった。この時は、ガイドが安全を考慮し、一番近くにいた他のショップのボートに引きあげてもらったのであった。
・原因
強い流れにつかまったことや、当時初心者だったことも理由だが、最大の理由は体調不良である。
1992年当時、筆者は毎日の帰宅が23時前後であった。かなり疲れていたはずだが、この時は筆者も20代だったためか、自覚症状がなかった。この時のログブックを見ると、エントリー時のタンク圧力は180キロ、最大水深は約13メートル、潜水時間は約30分であった。この程度で残圧ゼロになるのだから、物凄い勢いで空気を消費していたことになる。他の人からは、後で「呼吸音がすごかったよ」と言われたのであった。
風邪といった具体的な症状はなくとも体調不良は事故のもとになるし皆に迷惑をかける、ということをこの時に身をもって経験したのである。
・おまけ
今でも、他のショップのボートに引きあげてもらったときの事を鮮明に覚えている。筆者が休んでいると、そのボートからエントリーしたチームの面々がエキジットしてきたのであるが、見知らぬダイバー(筆者のこと)がいるので皆びっくりした様子であった。やがてボートが港に向かって走り出すと、そのチームのリーダーより「失礼ですがお名前教えてください」と言われたので、「折原です」と答えた。そうすると、後ろを指して「あのボートに乗ってきたんですよね」と言う。振り返ると、本来乗るべきボートがすぐ近くを並走していた。そのリーダー氏が「折原君をもらったぞー」と本来乗るべきボートに向かって話しかけると、むこうからは「いらねーよー」という冷たい返事。これは今でも忘れられない。
2.ナイトダイブでパニックになりかけ(慶良間)
・状況
”残圧ゼロ”の時と同じく、1992年に慶良間に行った際のことである。
ナイトダイビングの時にも、筆者は疲れのためか皆から遅れをとってしまったのであった。しかも、皆ライトは下向きにしているから、皆が根の影に入ったりすると、1人遅れている筆者の視界からは光が消えてしまうので、いきなり皆が消えてしまったように感じてしまい、パニックになりかけたのであった。
・原因
体調不良も原因であるが、仮にはぐれたとしても、教科書どおりに対応して注意深く浮上すればよいはずである。しかも、ナイトダイビングはそんなに広い範囲は動き回らないので、皆は近くにいるはずである。これを分かっていれば少々不安にはなってもパニックにはならない筈だ。
とにかく、パニックを起こしそうになるのは大問題である。
3.オーバーウェイト(奄美大島)
・状況
これは、1994年4月に奄美大島北部に行った時のことである。当時は経験本数35本くらいだった。筆者はどちらかというと寒がりなので、ドライスーツで潜った。
ドライスーツにもある程度慣れてきたころであったが、沈みにくいことも意識しはじめていたので、ウェイトをかなり重めにした。これで潜降は楽だったが、着底したらBCに空気を入れても入れても中性浮力がなかなかとれず、海底をえっちらおっちら這い回ったのであった。
幸いに平坦な砂地のポイントだったからまだよかったが、もしドロップオフのポイントだったらと思うとぞっとする。
・原因
潜降の基本技術を反復練習せず安易にウェイトを増やしたことにある。
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4.後ろにまわってしまったインフレーター(大瀬崎)
・状況
これはエビ潜の皆と行った際のことである。
ビーチエントリー後しばらく水面移動し、いざ潜降しようと思ったらインフレーターがつかめない。よく見るとインフレーターが背面に回ってしまい、どうにも手が回らない。近くに他のグループがいたので、頼んでインフレーターを前に回してもらった。その間に他の皆は潜降し、置いてきぼりをくってしまった。(今思えば、水面で一度BCを脱げば自分で直せたはずだが)
大瀬崎の湾内で流れもうねりもなかったからよかったが、もしこれがボートダイビングで、うねりが大きく素早い潜降が求められるような場合は、まごまごしているうちにボートと接触し怪我をするようなこともあるかもしれない。
・原因
機材装着時の注意不足が原因と思われる。
筆者が使用しているのはスキューバプロのBCだが、昔と違い、比較的最近の殆どのモデルはダンプバルブ部が自在に回転する。知らず知らずのうちにこのバルブ部が横を向いていて、装着時にそれを前(下)向きに戻し、中圧ホース共々体の前面に持ってくることを忘れると、このようになることが考えられる。
=おまけ:ダイビングフェスティバル2007=
今年のダイビングフェスティバルが終了した。一般入場者は約27,000人、昨年と比較し約30%増えている。かつての賑わいを取り戻せるかはわからないが、入場を無料に戻した効果はあったのだろう。
TUSAは昨年の”海猿中心展示”からごくごく普通の展示に戻り(但し”クイズ入りプロモーションビデオ”があって、2004年のミス・ダイバーが出演していた)、スキューバプロは横に長いブースを効果的に使っていたと思う。
今、筆者の手元には月刊マリンダイビングの2000年5月号がある。この中に「NEW GEAR TOPICS 2000 in ダイビングフェスティバル」という特集ページがあり、この中に2000年のダイビングフェスティバル会場の様子が小さく出ているが、これと比較してみると、2000年当時の賑わいにはまだまだ及ばないようだ。
なお、今年のミス・ダイバーコンテスト優勝者の大橋規子嬢、K-1のラウンドガールもつとめていたようで、どうもファン(仕事上のつきあい?)がいるらしい。今年のコンテストは昨年までのコンテストとは少し違った雰囲気だった。
(えっ?何でそんなこと知ってるかって?こういうときは、何処のブースの人かわからないけど、ミスコンの話題に詳しい人たちがこそこそ話をしてるのが聞こえてくるんですよ。別に筆者がミスコンマニアな訳ではありません。念のため申し添えます。)
以上
文責:折原 俊哉(会員)