地球の潜り方
その35 =ダイビングの目的地は秘境?それとも観光地?=
皆さんにとって、旅行先を選ぶ条件は何だろうか?
ワイワイ賑やかなメジャー観光地を選ぶ人もいれば、”秘境の地”を好む人もいる。ダイバーでも同じようなことがあると思う。行くのが楽なところ・毎日直行便が飛んでいるところがいいと言う人もいれば、”秘境の地”例えば直行便がなく乗り継ぎで行くにしても中継地から当地までの飛行機が週に1~2便というところがいいと言う人もいるだろう。
ここで、ダイビングにとっての秘境を以下の2つに分類してみたい。
1.あまり人が行かないところ
2.外国人は行くが日本人があまり行かないところ
メジャー観光地から少し離れたダイビング未開発地域(国内・国外を問わず)など
【正確には秘境ではないが、本稿では秘境として扱う。】
1.については、わが国の中にも秘境はまだある。
筆者がすぐに思いつくダイビングが出来る”秘境”は、鹿児島県のトカラ列島(鹿児島県十島村)である。空港はないので、島に行くには鹿児島か奄美大島からフェリーを利用することになる。最近のことでは、トカラ列島で皆既日食が観測できたが、その際の大騒ぎぶりは記憶に新しいところである。
以前にあるダイビングガイドから「トカラはいいですよ。但しあそこに行くなら会社をクビになる覚悟をした方がいいかもしれませんよ。海が荒れると長いこと島から出られなくなることもありますから。」と言われた。こう言われては二の足を踏んでしまう。
調べてみると、トカラ列島で潜るツアーはあることはあるが、何処か島に泊まるのではなく、鹿児島から出発するダイブクルーズのようである。
2.については、これはいたるところにある。
このようなところは、注目されてその後継続してツアーが組まれるようになると秘境ではなくなる。また、注目はされてもその後継続してツアーが組まれないと秘境のまま残る。
しばらく前までのメナドはこれに該当したと思うが、今は通年でツアーが組まれているのでもはや秘境とは言えない。
比較的近い海外では、ツアーが出たり出なかったりするコスラエが”秘境を保っている例”に当たるだろう。
この他、例えば日本国内では小笠原のように、船便の都合もあり長期休暇の取得が必要になることが多い場所がある。小笠原は一部時期を除き「出来れば10日間くらい休みをとって来てください」と言われることも多いようで、行きたくても行けない人が多いはずである。これは”感覚的秘境”と言えるかもしれない。
小笠原は通年でツアーが組まれているので秘境ではないのだが、ここ20年くらいで自然破壊が目立つようになったようで、しばらく前に入島制限の検討が行われた。多少でも”秘境化”して自然保護と観光業を両立させる考えであるが、後世のことを考えるとこれも必要なことだろう。
地球上で”秘境”というものはだんだんなくなっていくだろうが、その国からの旅行客の減少や昨年(2008年)秋以降の不況による交通需要の減少で航空便が廃止され、以前より”秘境化”するかもしれない場所が出てきている。
知名度が高いところではフィジーである。今年(2009年)3月下旬でエア・パシフィックのナンディ直行便がなくなったため、日本からの、特に関東からの訪問者はかなり減ったかもしれない。※)
ここで面白いのは、以前は日本からのツアーがあまりなかったと思われるフィジー本島(ビチレブ島)北部のラキラキ地区へのダイビングツアーが最近発売されていることである。
さて、皆さんは「秘境は秘境であって欲しい」と思うだろうか、それとも”秘境感”を残しつつある程度以上の利便性を求めるだろうか。
どちらか一方を正解とは言えない。正解は後世の人が判断することになろう。
※)
現在(2009年10月)、フィジーに行く場合はソウルから大韓航空を利用するものが多い。以前からソウル経由のツアーは発売されている。この他、エア・カランが東京線に接続するヌメア-ナンディ便を設定しているので、エア・カラン利用のツアーも発売されている。
また、以前より話の出ていたコンチネンタル航空のグアム-ナンディ線が12月中旬より週2便で開設される。グアムに深夜(往路)、早朝(復路)に乗り継ぐ必要があるが、ソウル経由より時間の効率はよいと言えるだろう。
(写真と本文は関係ありません。)
文責:折原 俊哉(会員)