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地球の潜り方

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その47 =旅行社の限界とは?=

 このコラムでは以前に「スッポン旅行社」と題して旅行会社の予約時の対応を取り上げた。

#  旅行に行く際に航空券、宿泊先等全てバラ買いする場合もあるが、旅行会社にツアーを申し込む場合も多い。  その際に小さな字でびっちりと書かれた旅行約款は必ず渡される(WEB予約の場合は画面上で確認した旨チェックを入れる)が、その中には旅行会社が持てる責任範囲が書いてある。
  それを超えた事態が発生した場合は、原則として旅行会社は責任をとらなくてよい。

  先日、大手電鉄系旅行会社H社のツアーで、帰路のロンドン・ヒースロー空港で抜き打ち保安検査に当たった為に搭乗予定便に乗ることができなった方に、添乗員が「頑張って帰ってきてください・・・」と言って置き去りにした(せざるを得なかった?)事態があったことが発覚した。これは全国紙にも載ったので憶えている人も多いだろう。

  この際、旅行会社H社はすぐさま「当社の手落ちではない」と発表した。すぐさまこう発表できるということは、旅行約款上の正当性があるからに他ならない。事実、全国紙掲載からしばらく後の週刊誌でこの記事を取り上げた際に、同業他社の添乗員へのインタビューが載っていたが「決定的な落ち度とは言えない」「仕方ない事態」という意見が結構多かった。

  ここで筆者が思い出したのが、2001年9月11日の米国同時多発テロである。この事件の日、本会会員でマーシャル諸島に滞在していた人がいた。
  航空会社の運行は全て停止したので、島から出ることが出来ない。旅行会社の中には「もう当社で出来ることがありません」とバンザイ状態になったところもあるようだ。どうすることも出来ない中、現地ダイビングガイドが色々と骨を折って世話をしてくださったそうである。

#  米国同時多発テロのような事態はなかなか想定できないが、先のヒースロー空港での事態の場合、抜き打ち保安検査があることは既知であろうから、それを想定した工程は組もうと思えば組めた筈だが、価格低減要求等からこれを考慮した余裕は持たなくなっているのだという。
  この件でも、置き去りにされた方は欧州旅行が初めてではなかったそうで、最終旅程表を見た際にヒースロー空港での余裕時間が少ないと感じていたそうだ。裁判の際には、抜き打ち保安検査に当たるか否かの予見可能性等々を論じるのだろうか。

※それにしても、ヒースロー空港は結構悪評の空港のようだ。以前から乗り継ぎ時のロストバゲージが多いそうだし、米国同時多発テロの後は保安検査場を通り過ぎた後でも搭乗口に行くまで何度も荷物・身体検査があるそうだ。このコラム開始当初に「大型荷物(2)」という記事を書いたが、このコラム中の「欧州某国某大空港は乗り継ぎ時の手荷物ハンドリングが悪く、ロストバゲージがよく発生」とは、ヒースロー空港のことである。

  旅行会社を選ぶ際に、クチコミサイトでの評判を見る他に、乗り継ぎがある場合はどの程度余裕を持った工程を組むかも判断基準のひとつになるそうだが、搭乗便は申し込まないと確約しないものも多いので、追加料金を初めから払って、便指定希望を出すのが予防策なのかもしれない。
  行き慣れたところならまだしも、初めて行った先でこのような事態にあって「頑張って帰ってきてください・・・」「Good Luck!」と言われたらたまらない。

※写真と本文は関係ありません。

文責:折原 俊哉(会員)

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