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地球の潜り方

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その50 =乱世で物騒は困るよ=

ダイビングは競技ではなくレジャー・旅行の一つである。
従って、周囲の状況に催行可否が大きく左右されるものである。
たとえば、飛行機に乗れる・乗れないについては本コラムその47:旅行社の限界とは?で書いたような事態が発生する訳である。

かなり以前に(2000年代前半頃だったと思う)21世紀は乱世であると占いか何かの記事で出ていたが、どうも本当のようである。これは困ったものである。
争乱が起きると旅行者の行き先が狭まってしまう。これはダイバーにとっても例外ではない。

エジプトでは、2005年に起きたシャルム・エル・シェイクでの連続爆発事件でツアー催行がしばらく中止になったのは記憶に新しいし、21世紀に入る前の1997年に起きたルクソールでの襲撃事件については、ルクソールはダイビングの目的地ではないが、ダイビングツアーでも帰国前日の窒素抜きを兼ねてルクソールを組み入れたツアーでは大きな影響を受けたといった記事を見た記憶がある。

アジア域内では、カリマンタン(ボルネオ)東岸が現在(2014年3月)深刻のようである。以前にシパダン付近でダイビングボートが海賊に襲われるという事件があったが、最近はポンポン島(シパダン付近、筆者が2011年に行ったマタキン島に近い)で台湾人が銃殺されるという事件が発生し、シパダン方面のツアーを全面的に取りやめている旅行会社もある模様。
マレーシア当局は犯人を南フィリピン地方のアブ・サヤフ(イスラム原理主義)とみているようである。確かに、地図を見ると、カリマンタンから少し北東へ行けばミンダナオ島に着く。ミンダナオ島の手前、少し西側へ行けばパラワン諸島だ。
以前にサイパン在住のフィリピン人ガイドから聞いた話では、ミンダナオ島にも海のきれいなところは多数あるそうなのだが、今の現地情勢ではダイビングツアーなどとてもできないのが残念とのことである。もし、世の中が乱れていなけれな、ダイビングの行き先の一つになりうる訳だ。(最近は情勢が以前よりは落ち着いているためか、ミンダナオ島ではリゾート開発が始まっているらしい。)

これ以外に、治安の悪化ではないが、軍事上の理由で観光客の立ち入りを制限しているところもある。たとえば、インド洋ではインド領のアンダマン諸島がそうだ。ここもリゾートホテルはあってダイビングは出来るようだが、日本からのツアーは筆者は見たことがない。
これとは違った形態が、カリマンタン(ボルネオ)北西のラヤンラヤンである。ここは中国、台湾、ベトナム、フィリピンも領有権を主張する南沙諸島の中である。マレーシアが領海確保のために作った殆ど人工の島であり、リゾート以外は海軍施設である。(ここはアンカーなしのドリフトダイビングが主体ということもあり、筆者は行ったことがない。)

世の中が物騒になると、どこに行くにも条件付きという形になってしまうかもしれないが、これは御免である。世界各地をリゾート開発せよというつもりは全くないが、乱世は治まって、色々なところに行けるようになって欲しいものである。

文責:折原 俊哉(会員)

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