地球の潜り方
その55 写真の撮り方はどんな撮り方?
多くの方はダイビング時に写真を撮られると思う。筆者がダイビングを始めたころは、今や懐かしの、富士写真フイルム「潜ルンです」が“入門機”で、ニコノスや一眼レフを持ち込むのは初心者ダイバーを脱してからであったが、今や誰でも手軽に水中写真を撮れるようになった。
さて、とうに一般化したと言っていよい水中写真だが、各位はどんな撮り方をされているだろうか?
1.姿勢
筆者の場合、元々陸上で飛行機を追いかけて写真を撮るところから撮影歴が始まったが、陸上では当たり前の「脇を締めてカメラを眼の手前に持ってきて構える」を最初にレンタルカメラで撮影した時に行った。そのときにガイドさんから「水中では両腕を出してカメラを構えるといいですよ。」と言われたのであった。
考えてみれば、一眼レフを除けばファインダーがないのでカメラを眼の手前に持って来る理由がない。逆に、背面モニターを見るには少し離さないといけない。(ファインダーがあってもマスク越しなら見にくいのであるが)流れがあるときはまず体を安定させて、その状態で最も撮りやすい姿勢をとる必要がある。そうなると陸上とは必ずしも同じ構えにはならないと、その時に体験したのであった。
では、プロカメラマンはどうしているのだろうか?
かなり以前に聞いたことだが、故舘石昭氏は体を安定させるために、ウェイトを相当巻きつけて、海底を這いつくばるような形で撮っていたこともあるという。(これは間違いだということであればご指摘いただきたい)
これと全く逆に、座間味を拠点に活動している水中写真家の井上慎也氏のように、水中生物を傷つけないように必ず中世浮力で撮るという形もある。
ここで、一般的な構えを水中造形センター刊「デジカメマリンフォト入門」初版で見てみると、
両手で持つ
脇を締める
下に珊瑚などがないことを確認し着底する
とある。これだけから見ると、陸上写真の構え方と結構共通だと思う。
「水中では両腕を出して・・・」というのは、体を生物に近づけすぎない配慮、息を吐いたときの泡の映り込み防止などであろうかと思う。
2.写真は横位置、縦位置どっち?
基本になるのは横位置であろうことは間違いない。しかし、被写体によっては縦位置撮影も大変有効な筈である。
筆者は以前に「水中写真で縦位置は邪道ですよ」と言われたこともあるのだが、そんなことはないはずである。そこで、手元にある水中造形センター刊「マリンフォト」2015年春号を見てみると、地球の海フォトコン2015の入選作品では以下のとおりであった。
地球環境部門 :グランプリ、準グランプリ、3位、いずれも縦位置
自由部門 :準グランプリが縦位置
ビギナー部門 :グランプリが縦位置
ビーチフォト部門:準グランプリが縦位置
注:実際は横位置での撮影を縦長にトリミングしたものがあるかもしれないが、ここではそれは問わないこととする。
上位入賞以外の写真も含めてざっと見てみると、概ね全体の2~3割が縦位置写真のようである。多数派ではないけれど、極めて少数派でもない。やっぱり水中写真でも縦位置は有効ですよ!現に、過去のエビ潜内のフォトコンテストでも、筆者が一位を頂いた写真は縦位置である。
水中写真で水底と水面を一枚に収めようとすれば縦位置が有効だし、陸上写真でも陸上と空(高い雲等)を一緒に撮ろうとするれば、縦位置の方が締まりの良い写真になることが多いと思う。あと、これは筆者のお勧めだが、飛行機から窓外の景色を撮影する際に、縦位置にすれば、眼下の被写体(島など)と空・雲まで自然に一緒に写る場合が多いと思う。
なんだかんだと言っても写真は各自の表現手段!姿勢も何もいろいろ試してみようではありませんか!
by Orichan
引用文献及びサイト:
水中造形センター刊「デジカメマリンフォト入門」初版(2006年4月10日発行)
井上慎也氏HP umima-ru http://www.umima-ru.com/
水中造形センター刊「マリンフォト」2015年春号(2015年4月7日発行)
文責:折原 俊哉(恵比寿潜酔会・懇親会系幹事)