地球の潜り方

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その74 免責同意書

 ダイビングと言えば必ず書く免責同意書「全て参加者の責任・・・」だが、法律に詳しくなくても、「欧米社会基準だよねえ」というのは皆想像するところである。
 ここで、ご厚意で読ませていただいたDAN JAPAN発行「Alert Diver2022年夏号」の記事「ダイビングの法的責任」によると、下記の趣旨の説明があった。

# ・法律上、免責同意書には効果がない。
・ただし、全ての安全管理をガイドが行うのは不可能なことを理解させるのには意味あり。
・些細な怪我(例えば擦り傷)、所持品紛失や破損に対しては有効。

 ダイビングの指導団体の殆どは欧米なので、欧米なら免責同意書に記入させる前提はどうなのか、というのを少し調べてみたら、20年以上前の古い記事であるが、以下のような比較があった。(※以下の比較は、日本において消費者契約法が施行される前に行われたものであり、諸外国の法律に関する記載は最新の内容ではありません。)

法律/国名 イギリス フランス ドイツ アメリカ
契約締結過程(錯誤、詐欺及び強迫に該当するものを除く)に関わる法律 不実表示法(1967)
・善意の不実表示の規制
(「非良心性」の法理(*1)(判例法))
(「不当威圧」の法理(*2)(判例法))
消費法典(1993)
・情報提供義務
(「契約締結上の過失」の法理(*3) (判例法)) 統一商事法典(1952)
・非良心性の法理(*1)の適用
(「不実表示」の法理(*4) (判例法))
(「不実威圧」の法理(*2) (判例法))
契約条項に関わる法律 不公正契約条項法(1977)
・免責条項の規制
消費者契約における不公正条項の規則(1994)
・不公正条項の規制
・契約の解釈原則
(消費者に有利に)
消費法典(1993)
・一定の不当条項の規制
・契約の解釈原則
(消費者に有利に)
普通取引約款規制法(1976)
・個別交渉なき夜間条項の規制
・不明瞭原則
(約款使用者に不利に)
統一商事法典(1952)
・非良心性の法理
 (*1)の適用
(「作成者不利の原則」(判例法))
契約条項に関わる法律 契約締結過程において、詐欺や錯誤等には該当しないが、非良心的と評価される事情がある場合で、契約条項が不公正である場合に、契約の効力を否定する考え方。
(*2)「不当威圧」の法理 契約締結過程において、当事者の一方が相手方の不当な影響ないし非良心的な強迫を受け、そのために自由な判断を行使することができなかった場合に、そのような事情のもとに締結された契約や合意などを取り消すことができるとする考え方。
(*3)「契約締結上の過失」の法理 契約締結過程において、一方の当事者の行為により、相手方に損害が発生した場合に、信義則に基づき損害賠償や契約解除を求めることができるとする考え方。
(*4)「不実表示」の法理 契約相手方による事実と一致しない書面又は口頭による表示が原因で契約が締結されたような場合に、当該契約が取り消しうるとする考え方。

 日本の場合、消費者契約法が出来る前は、民法(信義則、公序良俗、不法行為)の適用しかなかったそうなので、その時点と現在を比較すると、法規が出来た訳だから前進はしていることになる。 それでも、消費者契約法施行を境に免責同意書の中身が変わったかかというと、「変わったと思わない」と言う人が多数ではないかと思う。元々が欧米から入ってきたもので、指導団体で免責同意の雛形を作っているから、あまり変わりようがないのかもしれない。

 結局、事故を起こさないためにはまず自分のダイビング技術がどの程度か認識することや体調管理が重要、不安なこと等は隠さずにダイビングサービスに伝える、等々が重要なのだろう。

 ここで筆者がしばらく前に、ある地域のダイビングショップの比較をした時の例を紹介する。 筆者は元々鼻炎と言うこともあり、耳が比較的抜けにくい。よって、エントリー時に「ロープ無のフリー潜降で比較的深場で集合」というのは少々きついのだが、このようなエントリーにならざるを得ないポイントにあるダイビングショップ2軒に対して「耳が抜けにくい」を申し出たときの返答が下記の通りであった。

# ショップA:
 当日の参加者のレベルにより補助できる内容に差が出るが、その時に可能な範囲の対応はする。より安全に潜るなら、来訪時期を選ぶことも考えてほしい。

 ショップB:
 オトベントを試してほしい。(→耳がよく抜けるようになってから来てくれ、とも受けとれるが・・・。)

文責:折原俊哉(会員)

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