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地球の潜り方

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その83:魚の交雑

筆者宛に、時々LINEヤフーから「サストモ」という記事が送られてくる。
この記事の目的は「未来に関心を持つすべての人へ、サステナビリティに関するニュースやアイデアを届けるプロジェクト」というもので、以前は「Yahoo! JAPAN SDGs」と呼んでいたが、2024年9月に現在の名称になったものである。

記事の内容は商工業、農業、各種社会問題、災害、人権、気候変動関連等々、何でもで、気候変動による漁業への影響に関する記事も時々ある。
最近の記事で魚の交雑に関する記事があったので、フィッシュウォッチングが不得手な筆者が本コラムで魚について取り上げようと思う。

まず、「サストモ」の交雑記事で取り上げられていた魚であるが、食用魚、それもフグである。

同記事によれば、魚の雑種というのは、以前は稀にしか見られなかったそうだが、2013年頃から、東日本沿岸で一度にたくさんの雑種が獲れるということが起きたそうで、遺伝子を調べてみると、明らかにこれまでとはまったく異なる規模で交雑現象が発生、これは海洋の温暖化にともなう一方の親種の生息域の変化が関連していると思われたため、気候変動と関連づけて調査するようになったそうだ。

# フグの中でもトラフグ属は、遺伝的に近い種が多く含まれていて互いに近縁なため、生息域が変化したり、繁殖場所が重なったりすると、交雑しやすいそうである。
2012〜2013年頃から大量に獲れるようになったのが、ショウサイフグとゴマフグの雑種とのこと。近年、東京湾でもトラフグとマフグの交雑現象がみられるそうだ。

では、我々がダイビング中に見る(見たい)熱帯魚では交雑は起きるのだろうか?そこで、まずは観賞魚としての熱帯魚に関する記事を見てみよう。

「東京アクアガーデン」によると、自然界でも時折みられる現象だが飼育水槽では交雑の確率が格段に高く、条件が揃うとどんどん雑種化が進行しまうため、種を守る観点から注意が必要な事象、とある。水槽という閉鎖的な環境では起きやすいようで、自然界よりも交雑が起こりやすいとされる大きな要因は混泳とのこと。

「交雑はしっかり管理された環境で行う分には決して悪いことではない」と、品種改良を例に挙げているが、意図しない交雑は
・繁殖能力を持たないことが多い。
・短命、奇形などの個体が生まれやすい。
・元々持っていた形質が失われる。
・繁殖を繰り返すうちに退色することがある。

上記のような交雑のデメリットが強く出てしまい、熱帯魚の鑑賞性や健康を損ねてしまうことも少なくないそうだ。

# ざっと探した限りでは、我々レジャーダイバーがダイビング中に見る魚で交雑種が頻出・・・、というのは現時点ではないようだが、念のため、ダイバーみんなのアイドルであるクマノミについての交雑に関する記事を少し調べてみた。

そうすると、日本学術振興会の科学研究費助成事業(科研費)の研究成果報告書で「クマノミ類をモデル系とした海洋適応放散の進化遺伝機構」というものがあった。
この報告書中に「クマノミ類の中で系統的に大きく離れた種であるクマノミとカクレクマノミ作出した種間F1交雑個体の形質発現に関する解析を行い・・・」とあり、続けて「当初の予想とは異なりこのF1交雑個体の成長速度が遅かったため、本研究期間中にこの交雑家系を用いた次世代の作出を実施することができなかった」とのこと。

特定条件下を除けば、そんな簡単にはホイホイと交雑種が現れるものではないようである。
ただ、最近は気候変動の影響か、東京湾内でも珊瑚やクマノミが以前よりも多く見られるようになったようだから、今後は何らかの原因(例えば、あまり行って欲しくないが観賞魚の放流など)で、想像もしなかった交雑種が登場するのかもしれない。

注:写真と本文は関係ありません。

引用元:
・サストモHP内記事:海水温上昇が原因で起こるフグの交雑。モニタリングで、誤食による食中毒を防ぐ。
https://sdgs.yahoo.co.jp/featured/749.html
・東京アクアガーデンHP内記事:交雑するアクアリウムの魚・生き物とは!混泳を避けたい組み合わせを紹介
https://t-aquagarden.com/column/crossbreeding
・科学研究費助成事業(科研費)研究成果報告書:クマノミ類をモデル系とした海洋適応放散の進化遺伝機構
https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-18K06385/18K06385seika.pdf

文責:折原俊哉(恵比寿潜酔会・懇親会系幹事)

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