その67 肺炎とダイビング
世の中、新型肺炎の感染拡大防止のため外出自粛、営業自粛等々が続いている。(2020年5月初旬時点)
本稿執筆のための初期調査時点(2020年4月中旬)では、既に日本国内は外出自粛要請、海外旅行は近場も遠方もほぼできず、という状態である。
ダイビングサービスは3月末時点で一時営業休止もあれば、厳重対策の上で縮小営業のところもあったが、4月下旬時点では殆ど休業のようである。
さて、今回の新型肺炎、その名の通り「肺炎」なので、ダイビングの障害になることは間違いない。そこで、今回は肺炎とダイビングについて少し調べてみた。
1.申込時の感染症確認
ダイビングショップのHPを少し調べてみると、「ダイビングに適さないとされる肺と気管の主な疾患」として「気管支喘息、肺気腫、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、気管・気管支の蛇行、変形自然気胸、肺結核や気管支炎、肺炎などの呼吸器感染症、肺に空洞性䛾病変が残っている肺結核の後遺症や悪性腫瘍・・・」があった。
ダイビングライセンス取得時の講習でも少し習うと思うが、「肺炎などの呼吸器感染症」とハッキリ書いてある。
今回の新型肺炎が終息した後、「新型肺炎(COVID-19)罹患経験者はお申し出ください」等々、特別な確認ができるのかもしれない。これについて、DAN JAPAN等々では何か記事を載せているか、少し調べてみた。(次項)
2.DAN JAPANの説明
DAN JAPANのHPでは米国発の新型肺炎関連記事の和訳がいくつか出ている。(2020年5月初旬時点)
DAN JAPANのfacebookを見たところ、facebookからのリンク先、日本高気圧環境・潜水医学会のHPでは、バディブリージングなどマウスピースの共有による感染やレンタル器材からの感染の可能性について触れており、この他に「新型コロナウイルスを蔓延させない高気圧酸素治療方法について」という資料が載っていた。
内容を見ると、一般患者と新型肺炎患者を混在させない等々、医療機関全般でとる対策もあったがが、その中で再圧治療についても記載があった。抜粋は以下のとおり。
- 特に発熱(37.5度以上)や咳嗽、喀痰排出などの症状のある方の高気圧酸素治療装置内入室は行わない(治療前に掲示もしくは書面で患者通達を行う)。
- すでに新型コロナウイルス感染症が判明している方の高気圧酸素治療は救命・集中治療目的以外行わない。
- 新型コロナウイルス感染症が判明している場合、治療の有益性が勝る場合を除き高気圧酸素治療は行わないでください(完全な消毒方法が確立されていません)。
上記の「消毒方法が確立されていません」ということからすると、時々、病院や公共の場所を消毒している映像が放映されているが、あれでも完全かどうか分からないということかもしれない。
3.ベルギー潜水医学会の見解
本稿執筆開始後の調査(2020年4月下旬時点)で、オーシャナHPにベルギー潜水医学会の見解の抄訳が載っていた。(抜粋下記)
- 症状を伴う感染者の潜水再開は最低2ヶ月、できれば3ヶ月待機後が望ましい。
- 無症候の感染者(検査陽性のみ)の潜水再開は、1ヶ月待機する。
- 症状がなく検査を受けたこともない人は、行動制限解除後も新型コロナウイルスに感染する可能性があり、潜水再開には一定の期間待機すべきである。その期間は地域の事情による。
仮にベルギー潜水医学会の見解が全世界で採用されるとすると、今夏前に新型肺炎が終息したとしても、今夏は潜れない可能性が高いのだろう。潜れるようになっても、ダイビング前の体調確認に新型肺炎罹患確認は入ってくるのだろう。
間違いなく言えることは、将来もダイビングを楽しむためには「感染しない」ということが極めて重要であることのようだ。
しばらくして感染が沈静化した後に、ダイビングサービスで、また不幸にも減圧症を発症してしまった場合に、どんなことが起こるだろうか?
- 新型肺炎罹患経験者はお断り
- 新型肺炎罹患経験者は追加代金請求(レンタル器材、再圧治療の場合はチャンバーを含め医療機器の追加消毒)
上記のようなことが起こるのであろうか?とにもかくにも、まずは感染拡大抑止が一番、日々家籠り・可能な人はテレワークである。
注:写真と本文は関係ありません。
引用・参考:
- SCUBA PRO SHOP(http://bigfish.fun)
- DAN JAPAN facebook(https://www.facebook.com/DiversAlertNetworkJapan/)
- オーシャナHP「【新型コロナ】ダイバーが特に感染に注意すべき理由〜4月12日ベルギー潜水医学会の見解から見えてくるもの〜」https://oceana.ne.jp/covid19_03
文責:折原 俊哉(恵比寿潜酔会・懇親会系幹事)