その54 改めて余暇と利便性-いつまで同じことを繰り返すのか?
これまで「余暇と利便性」を題材にしたコラムは3件ある。(拙著その7、その38、その42)
拙著その7執筆時(かれこれ10年以上前である)から余暇事情が好転したとは言いがたく、「ホワイトカラーエグゼンプション導入法案」が出る一方で、今年(2015年)は9月に「シルバーウィーク」という名の5連休があり、来年(2016年)から8月11日が祝日「山の日」になる。そこで、拙著その42以来3年ぶりに余暇を取り上げたい。
まず、シルバーウィーク5連休は秋分の日と敬老の日の関係で出現するもので、今年(2015年)の次に5連休になるのは2026年だそうである。
山の日は「習慣的連休」と言える旧盆休みの前に1日付け足しのようなもので、この日を祝日にすることで何か変わるのか今一つよくわからない。周囲に聞くと「あまり意味のない祝日」との意見も結構ある。
今年(2015年)を見てみると、8月11日は火曜日で、比較的多くの企業は8月12日(水)より休みだったが、中には8月8日(土)から休みに入り、8月16日(日)まで休む人もいた。報道を見ていると、8月8日(土)から交通機関は帰省客で混みだしたので、8月11日が祝日であってもなくてもあまり関係のない人もそれなりにいたわけである。
それにしても、ただでさえ多い日本の祝日がまた増える訳で、ある種の異常さに拍車をかけているようだ。いつまでこんなことを繰り返しているのだろうか。以前の拙著に記したとおり、休まない人は休まないし、休めない人は休めないのである。注)
これも以前の拙著に記したことだが、祝日・祭日は、多くの場合、決まって交通機関の割引運賃がなくなるか、割引率が低くなるかのどちらかなので、祝日が多くなることが必ずしも気軽に旅行出来ることにつながらない部分がある。航空旅行でも、LCCといえど、繁忙期はそれなりに高い運賃になる。現に、筆者の知人の中には「連休じゃ代金が高くて旅行に行けない」と言っている人もいる。
このまま、総体的賃金減少と(主に煩忙期の)運賃上昇が進んだらどうなるのだろうか?行きつくところまで行ったらどうなるのだろうか?それとも日本国民を相手にしなくても外国人相手で稼ぐのだろうか?・・・等々を考えることがある今日この頃である。
注)
筆者は「アンチ時短論者」ではないが、日本の「こだわり」「作りこみ」それ自体が「必要以上に手間をかけますよ」と言っているようなもので、単純に時短だけで良し悪しを決めるならば、それは日本の製品・サービスの特徴を捨てることになりかねず、他国との差別化ができなくなることにつながる。
ただし、全てにおいて「こだわり」「作りこみ」が求められる訳ではないので、「サービスの多様化」を図る意味でも「こだわり」「作りこみ」をしない製品・サービスがあってもよいはずである。そうでないと、「1億総疲労」に拍車をかけるだけではないだろうか。
=おまけ:新幹線もやっとゆとり重視か?=
9月初旬に報道発表されたことだが、北陸新幹線車両(12両編成)に10月から12月の間に荷物置き場が設置される。概ね2両に1箇所、座席を外して設ける。荷物の多い観光客への対応やスキー・スノーボードなどの持ち込みへの対応とのことである。
今から12年前の拙著その1「大型荷物(1)」で「新幹線や在来線特急には大型手荷物置き場が充分でないものが多い。これから外国人観光客を増やそうというときに気になるが」と書いたが、やっと荷物置き場の拡充に目が向いたのかもしれない。
これまでも、JR東日本やJR西日本の一部の新幹線車両には荷物置き場が設置されてきた。(ただし客室ではなくデッキに面する。)北陸新幹線もやっぱり詰め込み優先か・・・、と思っていたが、約半年での変更である。さあ、どうするJR東海!東海道新幹線車両に荷物置き場が設置される日もそう遠くないのかな?
文責:折原 俊哉(恵比寿潜酔会・懇親会系幹事)